製図と絵心
こんにちは。あいです。
「私には絵を描くセンスがありませんが、デザイナーになれますか?」というご相談をいまだに少なからず頂きます。これは日本のインテリアコーディネーター資格試験などで手書きの製図の課題があるせいかもしれません。
ということで今日は「手描き」のスキルがインテリアデザイナーに必要か不要かについて、業界の現状も踏まえ、私の考えお伝えしようと思います。
まず、インテリアデザイナーにとって「描く」という作業は、「製図」と「スケッチ」の大きく2つに分けられます。
手描きの製図
「製図」はルールに従い、線を引く作業です。
線を引く作業といっても、建築のルールや書き方のルール、線の扱いについて理解しなくてはいけませんので誰でも即日簡単にできるという物ではありません。
時間も当然かかります。例えば、PCではワンクリックでできる線の太さと濃さの調整も、ペン先と筆圧の調整を手動で行います。
机に大きな紙をセットしたら、仕上がるまでその紙はそこにずっと張り付いたままになります。いろいろと面倒くさいです。
さて、そんな手書きの製図スキルですが、私は全く不要だと考えます。
手書きの図面はそれこそ70年ぐらい前が全盛期とも言えます。
コンピューター技術が発達していなかった時代に、建築インテリアの仕様書を、共通のルールに基づいて手描きで作成していましたが、現代の建築インテリアの世界で手描きの製図は存在さえしません。そうした作業は今はすべてコンピューターが担っています。
ということで製図については、手描きの訓練をするよりも、その時間をコンピュータースキルの習得に使った方が有意義なことは間違いありません。アメリカの大学のカリキュラムでも圧倒的にコンピュータースキル習得に力を入れています。ただし「図面を読める」のは大事なスキルです。
手描きのスケッチ
続いて、「スケッチ」のスキルです。こちらは「絵心」という言葉と結びつきが強いです。
立体やものの見え方について訓練をした人はその絵心をスキルとして利用できます。そういう訓練に縁の無かった場合は絵心がないとご自身で認識されている人も多いでしょう。
スケッチについては私は2つの理由で「できた方が得」だと考えています。
イメージを即座に立体で可視化し簡単に共有できる
お客さんとの言語以外のコミュニケーションツールとして使える
但し、これも「無いよりあったらいいかもね」程度の便利さです。私は自分の頭のアイデアを可視化するのに手描きスケッチをよく利用していますが、それも所詮自分のためのものなので、そのスキルを見せてどうのこうのという使い方はしていません。
それぞれ2つの手書きについて挙げましたが、実際、私がアメリカにおいてインテリア業界で横を見渡した時に、この「手描きのスキル」がないおかげでデザイナーとして脚を引っ張られている人を見たことがありません。
私のスクールで優秀な生徒さんでも、手描きの絵や図は苦手という方も多いです。ですが、その方のデザイナーとしての能力がそれで傷つく事はありません。「その人には不要なスキル」この一言で片付く話です。
やはり現代のデザイナーにおいて磨くべきは、製図スキルやスケッチスキルよりも、テクノロジーを使いこなすスキル、そして検索力と質問力だと思います。
日本では、資格試験の中で手書きの製図が求められるため、「できないとデザイナーになれない」と誤解してしまっている人もいるようですが、そんなことはありません。
実際の仕事においては、「手描き」はあっても無くても良いスキルです。自分に向いてないと思うなら、あっさり不要だと割り切って、別のスキルを磨くことに力を注いだ方が、時間的にもモチベーション維持の観点でも良いのではと思います。
絵心の無さで、インテリアデザインの勉強を始めるのが怖いと思っている方、その部分の心配は不要です。
HAVE A BEAUTIFUL DAY
AI